ちんちん短歌 増補改訂版
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第三十二回文学フリマ東京出品作品 A5サイズ冊子。64P。 「ちんちん短歌」が千首収録されています。ほか、ちんちん短歌を作る上でのルールのコラムなども4つほど収録されています。 送料は匿名配送ネコポスの370円になります。 あんしんBOOTHパックについて詳しくはこちらをご参照ください。 https://booth.pm/anshin_booth_pack_guides 以下、収録されているコラムより部分抜粋です。
短歌に「ちんちん」を入れたいとおもった。 ちんちんという単語を入れた短歌というものを、私は知らなかった。私は三十四年、人間をやり、無職をやってきたが、無職だけどそれなりに短歌は好きで、「あなたはなぜ仕事もせずに短歌ばかり眺めているんですか」と、当時専門学校生だった交際相手になじられたこともあった。 「死んでください。もう二度と会わないでください」 「どうしてセックスのことしか考えないのですか」 「あなたにとって私は所詮子供ですよね。子供相手にセックスするのって犯罪だと思います」 「死んでください。わたしが病院に行くお金を払ってください」 「もう二度と会わないでください」 とか、そういう声は心の中の思い出の中でよく聞くものの、他人の口から「ちんちん短歌っていいよねー素晴らしいよねーうひゃあー」という言葉は、ついぞ聞かない。 ちんちんを短歌にいれたら、きっといいぞ、これを「ちんちん短歌」と名付けて、楽しんで作ろう、これで俺は、文筆っぽい仕事をやってる人っぽくなるのだうひゃあ、と、その時私は希望のようなものを持っていたが、検索をかけたら私がちんちん短歌の事を思い抱く前から、ちんちん短歌はあった。単に私の勉強不足だった。万葉集や古今集和歌集をあたり、ダイレクトに「ちんちん」が読み込まれていることはないのを確認したつもりだったが、甘かった。すでに多くの人がちんちんを短歌にしたため、面白がっており、詠み方のコツなどを伝授するブログもあった。 「ちんちん短歌」は、私の発明などではなく、ごくありふれた花であって、花壇に植物は性器むき出しのままでいてその辺にあって、風にゆられて、いいにおいを出している。そのことに、人々は別に無頓着でいる。正気でいる。こんなにたくさん性器が、そこにあるというのに。 だが不思議なことに、ちんちん短歌は生まれてはいたものの、はぐくまれ、育てられた形跡はなかった。 少なくない人が、ちんちんという単語を短歌の中に入れて、面白がったり、連作をしたためていたりする。だが、そこまでだ。誰も専門的に、ちんちん短歌を追及したり、量産をしようとする人間はいなかった。ずっとずっとちんちん短歌を詠み続け、死ぬまで作り続け、死ぬまで愛していこうという人間はこの世にいなかった。 それはなぜなのか。 世界がなかったからじゃないか。 ちんちん短歌を専門的に詠んでよい、作ってよい、という世界が、まだこの世にはなかった。だから、滅びた。偶発的に「ちんちんを短歌の中に詠みこむと、なんだかおもしろい」という発見はあり、数首生まれる。だが、世界がないので、生まれてきた子供たちはそのまま、地獄の穴へ落ちていく。どんどんどんどん、生まれては、落ちていく。まるで俺みたいに、何にもせずに、ぼーっと過ごしながら、ただ下の方へ、下の方へ、より下の方へ。 ちんちん短歌の世界を私が作ったら、落ちていくべきはずのものたちは、留まることができるんじゃないだろうか。生きることができるのではないか。 生きてさえいれば、別れた交際相手もまたセックスしてくれるんじゃないだろうか。交際相手だけではない。私が「いいなあ、セックスをしたいなあ」と思った人たちにも、ちんちん短歌を通じていろんなことができるのかもしれない。生きてさえいれば。 だから、世界を作ろうと思った。ちんちん短歌を詠まれ、さらに作られ続ける世界を作るためには、まずはちんちん短歌そのものもたくさん作ろう。そしてそれらをまとめて出版という形で、ちんちん短歌を具現化させよう。具現化のために、それで、だから、私は、ちんちん短歌を、とりあえず千首詠んだ。これを、世界、としたい。 それが、「ちんちん短歌出版世界」であり、まずは世界を作って、ちんちん短歌がこの世にあるよ、といろんな人に知ってもらいたい。そのうえで私がしたいのは、短歌を使って人と知り合って、セックスがしたい。 平安人がセックスをするとき、まず覗きをしてから、短歌を作って送ったのち、返事が来たらアポをとり、その後セックスをしたそうだ。ちんちん短歌のある世界では、短歌を使って他人とセックスできるような、そんな世界になったらいいなと思っている。 つまり私はセックスがしたいのである。世界の中にいて、生きて、ちんちんを出し、セックスをして、生きていきたいのである。